空き缶

駅前に転がった空き缶を通りすぎたところで通学中と思われる男子高校生の足が止まった。少ししてあ~もうっ!って感じで息を吐いてから踵を返し空き缶を拾い近くのゴミ箱に入れて去っていった。

反対側のロータリーでバスを待ちながらそれを見ていた僕は『お前、良いよ』と心の中で親指を立てた。一回通りすぎて戻ってきたというところに僕はグッときた。もっと言うと立ち止まって少し考えていたところだ。この子の中のモラルや恥ずかしさやらが戦った時間があったのだろう。当たり前のように空き缶を拾える人も素敵だが立ち止まって考えずに出来てしまう育ちの良さやその環境が伺える。そういう人には空き缶を見て見ぬふりしてしまおうかという邪念が入り込む余地はないのである。どちらも空き缶を拾ったという結果は同じなのに僕は立ち止まって考え戦った末に拾うことを選んだ高校生の方が好きだ。